アポロニア21
編集長コラム2017

2月号

1970年代の学園紛争時代に大学院生だったU先生。当時、医学部・歯学部は新左翼系のセクトから「プチ・ブルジョアジー」と見なされ、教室や病院が、ゲバ学生らの襲撃の的になっていたそうです。

U先生ら若手、特に体育会系の猛者に命じられたのは、患者さんや施設をゲバ学生らから守ること。ヘルメットを被り角材を手にした一隊がバリケードの向こうから押し寄せて来るのを、必死に止めなければなりません。

中には、道路の縁石を剥がして院内に投げつけてくる輩もいたそうですが、防御側は石膏模型を投げつけるくらいしか手がありませんでした。U先生は、「投げた模型の中には、貴重な症例を記録したものもあったかもしれない。実にもったいないことをした……」と、今でも悔やんでいらっしゃいます。

体育会系なので先輩後輩の序列は絶対。加えて医学部・歯学部はただでさえ上下関係にうるさいのは周知の事実ですが、場合によっては、ゲバ学生側に立って病院を攻撃する「先輩」に鉢合わせしてしまうこともあったそうです。

防御側の最前線にいた某空手部員は、攻撃側に先輩がいるのを見つけ、襲撃を止めるどころか「押忍!」とあいさつして、そのまま通してしまったとか。後で、こっぴどく叱られたことでしょう。

学園紛争の際、バリケードを挟んでどちら側にいたのかが、歯科医師会などでの立場をはじめとする、その後の歯科医師人生にも大きく影響したようです。

今、ほとんどの大学で、学生運動らしき光景を見なくなりましたが、SNSの利用が増えていることから、おそらく学生たちの「主張」の仕方が変わったののでしょうが、すっかり静かになった母校のキャンパスを通るたび、少し寂しい気もします。

今回の特集では、開業医を中心として13人の歯科医師に、一般の人々に対してどのようなことを、どのようなメディアで発信したのか、その成果はどうだったのかを中心に書いていただきました。ご協力くださった先生方、年末年始に無理なお願いをお引き受けくださり、ありがとうございました。

(水谷)
1月号

あけましておめでとうございます。昨年は大荒れの年で、イギリスのEU離脱、アメリカでのトランプ氏の大統領当選と、年末まで大きな出来事が起こり続けた印象です。

医療界では、非常な高額で薬価収載された抗がん剤『オプジーボ』が話題となりました。歯科でも、歯槽骨欠損に効果があるとされる『リグロス』が、歯科では初めて2万円を超える薬価で保険収載されたのが注目されています。今年は、どのような年になるのでしょうか。

以前、ある先生から「将来は予測したりするものではなく、こう在りたいと目指すものだ」と教えていただいたことがあります。周囲を見渡すと、「こうしたい」という目標が生きる糧になっている方が大勢いらっしゃいます。

そのうち、薬学の立場から、歯科の可能性を広げる取り組みをしているのが、横浜薬科大学の石毛敦薬学部長です。「歯科医療に、もっと漢方薬の使用を広げたい。特に、慢性歯周疾患への十全大補湯の適応拡大は急務だ」と、ある勉強会で語っていらっしゃいました。

十全大補湯は、中国・宋代の医学書『太平恵民和剤局方』を原典とする薬で、虚弱を補い、バランスを整える効果があるとされます。最近では、がん医療にも使用されていますが、石毛氏が注目しているのは、腸管免疫を強める作用だそうです。同大では、マウスによる実験で、十全大補湯の投与によってヒートショックプロテインの発現が抑えられることを実証しています。腸内細菌叢のバランスを整えることから、歯周疾患の重症化予防にも効果が期待できるかもしれません。

「この漢方薬は保険で使えるか?」には地域差もあるようで、現場での実績の積み上げが必要ですが、歯科以外の所で歯科医療を「面白くする」研究が進んでいるのは心強いことです。

今回の特集は、自院の特徴をどのように訴求するかをテーマに、さまざまなアイデアを探してみました。取材先で共通して教えられたのは、「患者さんを集める工夫をするだけではダメ。患者さんが安心・満足できるよう、院内体制の改善が先だ」ということでした。地道な努力が、結局は早道ということでしょうか。

(水谷)